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ピロリ菌のお話

ピロリ菌とは?

胃の中には、食べ物を消化するための強い酸(胃酸)が分泌されていて、細菌はとても住めない環境だと長い間考えられていました。
ところが1983年にオーストラリアのウォーレンとマーシャルという2人の医学者が、胃の粘膜に住み着いている細菌を取り出して、培養することに成功しました。
この細菌(バクテリア)はらせん形(ヘリカル)をして、胃の出口付近(幽門:ピロルス)で発見されたので、ヘリコバクター・ピロリと名付けられました。これが一般的には、ピロリ菌と呼ばれています。

ウォーレンとマーシャルはこのピロリ菌が胃炎や胃潰瘍の原因ではないかと考えました。しかし最初はなかなか信用されませんでした。
というのは、今までストレスなどでできると考えられていた胃潰瘍が、ピロリ菌が原因となると、肝炎や膀胱炎と同じような細菌による感染症ということになり、抗生物質による治療が必要になるからです。
そこでウォーレンは、自ら培養したピロリ菌を飲み込み、見事(?)急性胃炎になったのです。それからというもの全世界で急速にピロリ菌の研究が進み、今では胃炎や胃潰瘍はもちろん、胃癌やマルトリンパ腫などの成因にもピロリ菌が深くかかわっていることがわかってきました。
欧米ではかなり以前から、胃・十二指腸潰瘍の治療には抗生物質を組み合わせた除菌療法が常識となっています。
日本でもようやく2000年11月より除菌療法が保険適応になりました。

ピロリ菌はどこからうつるの?

くわしい感染経路はわかっていませんが、おそらく口を経由して感染する(経口感染)ものと思われています。

感染するのは通常こどものころで、おとなになってからは感染することはほとんどないようです。
発展途上国など衛生状態が良くない環境で感染率が高く、先進国では感染率が低いと言われています。
日本では戦中戦後まもないころの衛生状態が悪いころに生まれた人の感染率が高く、40才以降の人は7~8割がピロリ菌陽性と言われています。
また近年内視鏡を介したピロリ菌の感染が問題になっています。これは十分に消毒されていない内視鏡(胃カメラ)で検査を受けたためにピロリ菌に感染してしまう危険があるのです。当院ではこのようなことを防ぐために、専用の内視鏡洗浄機を導入しました。
検査毎にこの洗浄機にかけて内視鏡を洗浄するので、安心して検査を受けていただくことができます。

ピロリ菌に感染しているかはどうやって調べるの?

大きくわけて、内視鏡を使う方法と使わない方法があります。

内視鏡検査の場合は、直接胃の粘膜の一部を採取(生検)し、ピロリ菌の存在を調べます。
これには採取した胃の組織を顕微鏡で観察してピロリ菌の有無を調べる鏡検法と、採取した組織を培養してピロリ菌が出現するか観察する培養法と、ピロリ菌が出すウレアーゼという酵素の有無を調べる迅速ウレアーゼ試験があります。
内視鏡を使わない方法として、尿素呼気試験と血液をとってピロリ菌に対する抗体を調べる血液検査があります。
尿素呼気試験とは特殊な炭素を含んだ尿素という薬を飲んで、飲む前と後で吐く息(呼気)をバッグに採取します。
ピロリ菌がいると、ピロリ菌の出すウレアーゼという酵素の働きで、尿素がアンモニアと二酸化炭素に分解されて吐く息の中に出てきます。ですから薬を飲んだ後の呼気の中に特殊な炭素が含まれていれば、ピロリ菌によって尿素が分解されたということになります。
血液検査は簡単ですが、ピロリ菌に対する抗体は、ピロリ菌が死んでもしばらくは消えないので、治療がうまくいったかどうか(除菌)の判定には向いていません。

保険診療でピロリ菌の有無を調べる場合や除菌を行う場合、内視鏡検査で慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍が認められた場合に限ります。
内視鏡検査は少し大変ですが、直接胃の粘膜の状態が観察できますし、癌の合併がないかどうかもわかります。経鼻内視鏡は負担も少ないので、まず内視鏡検査で、慢性胃炎や胃・十二指腸潰瘍の有無とピロリ菌の有無を調べて、除菌後の効果判定は尿素呼気試験を行うのが良いと思われます。

ピロリ菌の治療はどうやって行うの?

ピロリ菌の治療は2種類の抗菌薬と酸分泌抑制薬の組み合わせで行います。

具体的にはプロトンポンプインヒビター(PPI)と呼ばれる強力な胃酸分泌抑制薬を朝夕の2回と、アモキシシリンとクラリスロマイシンという抗菌薬をそれぞれ1,500mg、400~800mgを朝夕の2回に分けて1週間内服します。PPIだけで潰瘍は治りますが、ピロリ菌は死にません。また抗菌薬だけでも酸性の胃の中では効き目がよくありません。
いろいろな薬の組み合わせが試されましたが、現在この方法が最も効果があり、約80~90%の除菌(ピロリ菌が死に絶えた状態)が得られるといわれています。
副作用で下痢をおこす方がいます(抗菌薬のせいで腸内の良い細菌も死ぬため)が、重篤な副作用はありません。
除菌に成功すると、再びピロリ菌に感染することはまずありません。また除菌後に胃酸の分泌が良くなって、逆流性食道炎をおこす場合がありますが、多くは軽く済むようです。
最初の除菌に失敗した場合は、抗菌薬の効かない耐性菌ができています。クラリスロマイシンをメトロニダゾールという薬に変更してもう1回除菌療法行なうことができます。

C型肝炎のお話

C型肝炎とはどんな病気?

特に自覚症状はないんだけれど、健康診断で肝臓が悪いといわれ、調べたらC型肝炎だった。あるいは、献血をしたら、C型肝炎といわれた。
このような経験をされた方はいませんか?C型肝炎とは、C型肝炎ウイルス(HCV)が肝臓に住み着いており、多くの場合徐々に進行して、慢性肝炎から肝硬変、さらには肝臓癌をおこしてくる慢性の病気です。

このようなC型肝炎の人は日本で100万人以上いるとされています。
近年肝臓癌で亡くなる方は、年間3万人を超えて年々増加し、肺癌、胃癌に続いて癌による死亡原因の第3位となっています。この肝臓癌で亡くなる方の8割が、C型肝炎です。

C型肝炎はどうやってうつるの?

C型肝炎ウイルスは血液を介して感染します。

まだC型肝炎のくわしいことがわからなかった10年以上前では、輸血や十分消毒されていない注射器の使い回しなどから感染したと考えられます。
現在(1994年以降)では輸血用血液に対してC型肝炎ウイルスのチェックがされており、ほとんどの医療機関で使い捨ての注射器が使用されていますので、新しくC型肝炎に感染することはまずありませんが、以前輸血を受けたことがある方は、1度C型肝炎のチェックを受けた方が良いでしょう(特に輸血後に黄疸が出た方)。
C型肝炎の方と一緒に暮らしても、日常生活でうつることはありません。感染力が弱いので、性交渉でうつることもほとんどないとされています。(B型肝炎は性交渉で感染します。)

C型肝炎にうつるとどうなるの?

C型肝炎ウイルスに感染すると、通常数週間の潜伏期を経て急性肝炎をおこします。

症状は微熱、食欲不振、全身倦怠感などかぜに似た症状です。
A型急性肝炎やB型急性肝炎に比べて、C型急性肝炎は症状が弱いので、気づかずにすぎてしまう場合もあります。しかしA型や成人のB型急性肝炎は症状がおさまれば治ってしまいますが、C型急性肝炎はその約60~80%が慢性化します。
慢性肝炎の時期は自覚症状がないために、たまたま血液検査で肝臓の障害を指摘されて気がつく場合がほとんどです。
こうして気づかれないまま、慢性肝炎が徐々に進行すると、その約30~40%の人は約20年で肝硬変になると言われています。
肝硬変がさらに進行すると、黄疸、腹水、食道静脈瘤、肝性脳症といった様々な合併症がでてきます。
なかでも肝臓癌の合併率が高く、肝硬変になった人の60~80%はC型肝炎にかかってから20~30年で肝臓癌を発症します。

C型肝炎かはどうやって調べるの?

C型肝炎かどうかは血液検査でC型肝炎ウイルスに対する抗体であるHCV抗体を測定することでわかります。

HCV抗体が陽性であれば、現在あるいは過去にC型肝炎に感染したことがわかります。さらにC型肝炎ウイルスが現在も感染しているかどうかは、C型肝炎ウイルスの遺伝子であるHCV-RNAを測定します。
これが陽性であれば現在もC型肝炎ウイルスに感染していることがわかります。
AST,ALT(あるいはGOT,GPT)という言葉をお聞きになったことはありませんか?
これらは肝臓の細胞の中に含まれている酵素で、肝炎で肝臓の細胞が壊れると血液中に漏れ出して基準値よりも高くなります。ですからAST,ALTが高値の場合肝臓に障害があることがわかります。
慢性肝炎の場合この異常が6ヶ月以上続く場合を言います。

C型肝炎はどうやって治療するの?

C型肝炎の治療で大切なことは、慢性肝炎のうちに治療して肝硬変や肝癌に進行するのを防ぐことです。C型慢性肝炎の治療には、ウイルスそのものを退治する原因療法と、ウイルスは退治できないが肝炎の鎮静化をはかり、肝硬変への進行を遅らせる対症療法があります。

C型肝炎の治療は最近目覚ましい進歩があります。従来はインタ-フェロンという注射薬で治療するのが主流でした。当初はインターフェロンを使用しても3割程度の方しか治療できない時期もありました。
その後インターフェロンの改良や飲み薬との併用で8割近くの方が治るようになってきました。しかしインタ-フェロンは定期的に注射に通う必要があり、また副作用も強く途中で治療を断念せざるを得ない方もみえました。
2014年からインタ-フェロンを使用せず、抗ウイルス剤という飲み薬だけで治療する方法が保険適用になりました。この方法は治癒率が高いだけでなく副作用も少ないので、以前インタ-フェロンでうまく治療できなかった方や高齢の方でも治療できる画期的な治療法です。さらに今後も新しい経口ウイルス剤が保険適応になる予定です。
C型肝炎は飲み薬で治療できる時代になりました。また現在C型肝炎の治療に関して国から治療費の補助がでます。
抗ウイルス剤は高価ですが、申請すれば月々1万円あるいは2万円(治療を受ける方の年収による)の自己負担で治療を受けることができます。
今までインタ-フェロンの副作用が怖くて治療をためらっていた方も一度ご相談ください。

脂肪肝のお話

脂肪肝は怖い病気?

「脂肪肝ってお酒飲みの病気でしょ!?」と思っている方も多いかもしれませんが、最近お酒を飲まない方の脂肪肝が増えています。

脂肪肝とは中性脂肪が肝臓内に多く蓄積した状態です。症状がないため放置しがちですが、進行すると慢性肝炎から、肝硬変、肝癌になるリスクのある病気です。

脂肪肝には飲酒量が多い人に起こるアルコール性脂肪肝と、アルコールを飲まない人に起こる非アルコール性脂肪肝(non-alcholic fatty liver disease : NAFLD)があります。
NAFLDはいわゆるメタボとの関連が指摘されています。
この為最近ではMAFLD(metabolic associated fatty liver disease)とも呼ばれます。
このNAFLD(MAFLD)の内10〜20%の人が慢性肝炎から肝硬変に進行する非アルコール性脂肪性肝炎(NASH又はMASH)となります。

現在日本のNAFLD患者数は約2,000万人に上ると推定されています。
従来肝硬変の原因の多くはB型肝炎やC型肝炎といったウイルス性肝炎でしたが、現在はこれらの病気は薬で治るようになったため、NASHによる肝硬変が増えてきて問題となっています。

なぜ肝硬変が問題になるのでしょうか?

肝硬変とは慢性的に肝炎が続いた結果、肝臓に繊維化が起こり肝臓が硬く縮んでしまった状態です。肝硬変が進行すると腹水や黄疸、食道静脈瘤や肝癌の合併を起こしてきます。いったん肝硬変になった肝臓は元に戻りません。ですから脂肪肝のうちに治療する必要があります。

脂肪肝は自覚症状がないので、たまたま健診などで肝機能異常を指摘されて判明することが多いのです。この為日本肝臓学会では2023年奈良で行われた肝臓学会総会で、肝機能の数値である「ALTが30を超える場合はかかりつけ医を受診しましょう」という奈良宣言を出しました。これは早めに脂肪肝を見つけることによって将来の肝硬変・肝癌を予防することを目指しています。
症状がないからと言って放置せず、健診で異常が認められたらかかりつけ医を受診して下さい。

肝機能異常がある場合、まず腹部超音波検査で肝臓の状態を見ます。
脂肪肝の方は通常よりも肝臓が白っぽく写ってきます。
血液検査ではウイルス肝炎や他の要因がないかチェックします。肝臓の繊維化(肝硬変や肝癌のリスクがあるか)の予測にはFIB-4インデックスがよく用いられます。血液検査値など4つの項目から計算する数値で、FIB-4インデックスが1.3以上の場合は専門医受診が薦められます。NASHかどうかは肝生検といって肝臓に細い針を刺して組織を回収し診断します。

脂肪肝には特効薬はありません。
アルコール性脂肪肝の方は飲酒量を減らすことが一番の薬です。
非アルコール性の方で高血圧や糖尿病、脂質異常症のある方はまずその治療を続けることと、肥満やメタボの方は食事内容の改善や適度な運動を行なって減量することが大切です。

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